石の温かさに包まれる:チステルニーノ Cisternino
ジョヴァンニの生まれ故郷、チステルニーノ。この町を初めて日本に紹介した陣内秀信氏は
- "ヘンリー・ムーアの彫刻の中にいるような錯覚を覚える"
旧市街地(チェントロ ストイコ)は細い路地と白い漆喰の壁がまるで迷路のようにつながり、あの角を曲がったらどんな風景が待っているのだろうとワクワクします。チステルニーノの魅力はこの街のこじんまりとした可愛らしさでしょうか。旧市街全体が一つの大きな石の建物、いえ、「生き物」のような感じさえします。周辺の同じように白い街、オストゥーニやロコロトンドなどと比べてここでは旅人が自分の思いを街に投影できるところのような気がします。白い、石の、半分閉ざされた空間であるのにも関わらず威圧感や閉塞感を感じないのは建物の大きさが不必要に大きすぎず人間の暮しにちょうどいいサイズだからなのかもしれません。
町はいつも隅々まで塵一つなく掃除されています。人が通れるだけの高さギリギリのトンネルの先は袋小路になっていて、外付けの階段に腰掛けて住人たちがおしゃべりをしている風景をよく見かけます。さながらサロンのよう、住む人の生活空間の一部になっているのです。そんな静かで神秘的でどこか温かいこの町の雰囲気を楽しむには春か秋に訪れることをお薦めします。
夏はとっても賑やかです。夜になると、毎晩のように広場でコンサートが行われ観光客で溢れかえります。中でも8月第1日曜日の守護聖人のお祭り(festa dei Santi Patroni Quirico e Giulitta')にはルミナリエで町中が飾られとてもきれいです。街の人々も観光客も負けずにおめかしをして夜遅くまで広場でおしゃべりをしたり、ジェラートを片手に散歩したりしています。
また、この街の名物は路地に席を並べ街のお肉屋さんが仔羊やソーセージのローストを食べさせてくれるレストラン。香ばしい香りにつられてついつい足が向いてしまいます。ただし予約していかないとなかなかごちそうにはありつけません。
ガイドブックにはチステルニーノの起源はトロイア戦争の英雄ディオメデスとその仲間たちが住み着き"ストゥルノ"と 呼ばれていた頃にさかのぼり、その後ローマ時代には第二次ポエニ戦争でハンニバルに破壊された(216 A.D.)と書かれています。今残る町の形成は12世紀カトリックのバジリアン派の僧侶たちが迫害を逃れて住み着いた頃 とされています。
チステルニーノはちょうどプーリア州の中心部に位置しています。バーリ空港から約80km, ブリンディジ空港からは50kmの距離。アドリア海までは15km程。海抜400mの丘の上に位置し、イトリアの谷(Valle d'Itria)に面しています。人口は町の中心部に約3,500人、周辺部に約7,500人、合計で12,000人程です。電車では私鉄 スッデェスト (Sud-est)線のチステルニーノ(Cisternino)駅が一番便利です。アルベロベッロやオストゥーニ、レッチェなどへも電車で行けるので、プーリアめぐりの拠点にするのもよいところです。(右の地図をクリックすると大きくなります。→)