イタリアの果てで世界を想う:オートラント Otranto

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イタリアの有名雑誌「パノラマ」でここ数年間、イタリアで一番水のきれいな海水浴場に選ばれているのは、なにを隠そうイタリア半島最南東の街、オートラント(Otranto)なのです。しかし、この街に来る価値は美しい海だけではありません。決して見逃して欲しくないものがカテドラーレ(大聖堂)にあります。

世界一大きなモザイク画の床

puglia_otranto3.jpg それは、「生命の木」と名付けられた床一面を覆うモザイク画。1163年〜1166年にかけて芸術家でもあったパンタローネ神父によって作られました。キリスト教の教えを基本としながらもギリシャ神話や歴史書、文学などからのモチーフを含め普遍的な世界観、自然観を表現したものです。人種や宗教、政治的信条などに囚われず人間の真実はユニバーサルで唯一無二のものであるというメッセージが描かれています。キリスト教徒ではない私は聖書の物語はほとんど知りませんが、この「生命の木」の根はどこか特定の土地の生えているのではなくゾウの背中の上に乗っているところが、とても面白いと思いました。600平方メートルに及ぶ床一面にえがかれたこの絵は、一部的に剥がれしまっている部分もありますが、ほぼその全景を保っています。今でもこの街の大聖堂であるこの教会は普通の教会としての機能も果たしているので人々はこの偉大な芸術品の上でミサを行い、祈りを捧げています。puglia_otranto4.jpg ここに、このモザイク画の研究をライフワークとしているDon Grazio Gianfreda(グラッツィオ・ジャンフレッダ神父)がいらっしゃいます。神父は何冊もこのモザイク画研究の本を出版されています。その多くはイタリア語のみなので未だ読むことができずにいますが、このモザイク画について私ももっともっと詳しく知りたいと思っています。

800人の殉教者たち

イタリアの最南東のこの街からは晴れた日にはアドリア海の向こう側のアルバニアの山脈やギリシャのコーフ島なども見えます。1480年にはトルコ軍の侵略に街は陥落。800人もの殉教者を出しました。イスラム教に改宗することを拒んだ15歳からの成人男子の遺骸がこの大聖堂に陳列されています。500年以上の時を越えてガラス越しにぎっしりと並ぶ頭蓋骨を真近にする時、その気味悪さよりも、今でも同じようなことを繰り返している人類の愚かさを省みて失望感を覚えます。「生命の木」に込められたメッセージと、「800人の髑髏」が伝える戦で不条理に命を落とす人々の無念さ。しっかりと心に留める必要性があるのはまさに今だと思います。

アクセス
レッチェから約60km。車で1時間弱。sud-est線を乗り継いでも行かれます。秋から春までは夏のにぎやかさがウソのように淋しくなります。お店も閉まってしまうところが多いです。ただゆっくりとカテドラーレを見学するには適しています。教会はお昼の数時間閉まってしまうので午前中早い時間に訪れることをお薦めします。
[2004年02月02日] TrackBack(0)
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